2023-02-03 20:00

田村潔司「解析UWF」第5回…長期欠場中に気づいた山崎一夫さんのうまさ

1992年10月23日のUインター。髙田のハイキックが北尾の顔面に直撃し、見事KO勝ち
1992年10月23日のUインター。髙田のハイキックが北尾の顔面に直撃し、見事KO勝ち
写真提供=平工幸雄

田村潔司が偉大なる先人たちに学んだことは、リング上での戦い方だけではない。団体のためにトップの座を明け渡し、相手を輝かせることで魅せた山崎一夫。全てを抱えるイベンターとして、自らを犠牲に興行を成功に導いた髙田延彦。田村の目に映る先輩たちは、試合に勝つことそれ以上に大きな重圧を背負い、日々鍛錬を積んでいたのだ。真の強さとはいったい何か、語っていただいた。

1989年10月25日、新生UWFの北海道・札幌中島体育センター大会。腕を骨折し欠場した船木誠勝さんの代わりに、まだデビュー半年、5戦目でペーペーの若手だったボクが、UWFの大エースだった前田日明さんと対戦した。捨て身で向かっていったが、首相撲でつかまり顔面に何発もヒザ蹴りを入れられてKO負けの惨敗。眼窩底骨折の重傷を負い、結局、401日(1年1カ月)の長期欠場を強いられることとなった。

デビューしたばかりで試合ができない、練習も満足にできない空白期間ができたことで、当時はすごく焦りを感じたけど、結果として欠場していた1年1カ月の間、自分にとって大きな収穫があった。

それは欠場中、UWFすべての興行の第1試合からメインイベントまで全試合をセコンドとして観させてもらったことで、たくさん気づきがあり、プロとしてものすごく勉強になったこと。これは後輩のカッキー(垣原賢人)や冨宅(飛駈)も経験していないボクだけの財産であり、あの1年1カ月の欠場期間なくして、のちの田村潔司はなかったと思っている。

同じ試合を観るにしても、映像で観るのとセコンドとしてリングサイドでマットにへばりついて観るのとではまったく違う。至近距離で観ていると、細かな技術だけでなく、観客にはわからない攻防や、先輩たちの感情や何を考えているのかまで伝わってきた。また、自分の背後にはお客さんがいて歓声が聞こえるので、どの動きをしたらお客さんが沸いているのかが、背中越しにダイレクトに感じられた。

ボクはデビュー前、髙田延彦さんから「お客さんに伝わるようにしろ」というアドバイスをいただいたことは以前書いたけど、リングサイドで観客の歓声を背中で感じながら試合を観ることで、どうすればお客さんに響くのか、どうやってしまったら響かないのかが、なんとなく肌感覚でわかるようになってきた。

例えば、関節技を仕掛けられてロープに逃げる動きひとつ取っても、ただ手を伸ばしてエスケープするだけではお客さんに伝わらない。逃げるのにもお客さんに伝わる逃げ方がある。別にオーバーアクションをしろというわけじゃなくて、逃げる動きや、その時の苦しい表情、焦りの表情、無様な表情など、場面場面でいろんなものをお客さんの感情に当てはめていく必要がある。地味と言われる関節技の攻防で、なぜUWFの選手たちはお客さんを沸かせることができたのかといえば、単に関節技を極める技術だけでなく、そういった“プロとしての技術”も持ちあわせていたからなのだ。

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年3月号 [雑誌] Kindle版
▼Amazonで購入

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年3月号 [雑誌] Kindle版

Amazon Kindle

楽天Kobo

Apple Books

紀伊國屋Kinoppy

BOOK☆WALKER

honto

セブンネットショッピング

DMM

ebookjapan

ブックパス

Reader Store

COCORO BOOKS

コミックシーモア

ブックライブ

dブック

ヨドバシ.com

その他、電子書籍サイトにて配信!

闘魂と王道 – 昭和プロレスの16年戦争 – Kindle版
Amazonで購入

Twitterでシェア

関連記事

BUBKA RANKING5:30更新

  1. 鈴木みのるインタビュー、帝王・高山善廣のこれまでとこれから
  2. すべての球団は消耗品である「#3 1999年の野村阪神編」byプロ野球死亡遊戯
  3. SKE48荒井優希、3度目の防衛成功「ここで満足せずにもっと高みを目指す」
  4. SKE48荒井優希「プロレス界でももっと1番を狙っていけるように」渡辺未詩とのタッグで勝利を収める
  5. SKE48荒井優希&山下実優組がアジャコング&宮本もか組に勝利!!リング上ではSKE48のミニライブも
  6. SKE48荒井優希選手「CyberFight Festival 2022」参戦!6人タッグマッチに挑む
  7. SKE48荒井優希、赤井沙希とのタッグで勝利!プリンセスタッグ選手権ベルトに挑戦
  8. SKE48荒井優希&赤井沙希、プリンセスタッグ第10代王者のベルトを手にして号泣
  9. SKE48荒井優希、宮本もか選手とのタッグで準決勝進出「この勢いで次の試合でも頑張りたい」
  10. SKE48荒井優希、人生初の“ビンタ”に気合!!久々のシングルマッチ決定に「自分のできることを全部出せたらベスト」
  1. 39年前のサザンの名曲がCMソングに…綾瀬はるかと河合優実が初共演
  2. 乃木坂46・遠藤さくらに齋藤飛鳥の影!?ドームツアーで放った圧倒的存在感の理由
  3. 「ひなたフェス2024」がついに開幕!野外ライブでブチ上がる楽曲『キツネ』の合法的飛び跳ね方のススメ
  4. 乃木坂46ドームツアー考察”2年連続座長”のエース・井上和の涙から感じた「乃木坂46らしさ」とは?
  5. HKT48『僕はやっと君を心配できる』MV公開!Wセンター石橋颯「胸がぎゅっとするようなメンバーの表情がたくさん」
  6. 乃木坂46田村真佑&池田瑛紗、“期の最年長”ペアが語るグループの現在地
  7. 日向坂46「ひなたフェス2024」開催直前!大興奮の松田好花が「見ないでほしい」ほど恥ずかしいものとは!?
  8. 鈴木みのるインタビュー、帝王・高山善廣のこれまでとこれから
  9. 乃木坂46「真夏の全国ツアー2024」7公演総動員数26.5万人…聖地 明治神宮野球場で終了
  10. 日向坂46・四期生が誰よりも高く跳んだ日━━武道館3Daysで見せつけた実力と一体感、そしてハッピーオーラ!