田村潔司「解析UWF」第2回…アントニオ猪木が与えた多大なる影響

前田日明とアントニオ猪木
写真提供=平工幸雄

10月1日に逝去した名プロレスラー、アントニオ猪木。「プロレスこそ最強の格闘技である」をモットーとして掲げ、ショーの要素の強いプロレスではなく、リアルな“闘い”を追い求め、それをリングの上で強く反映させた。そんな猪木率いる新日本プロレスと袂を分かつ形で生まれたUWFであったが、「格闘技色の強い、まったく新しいプロレス」であったUWFの興隆の裏側に、猪木の影響が色濃くあったことに異論はないだろう。今なお格闘プロレスにこだわり続ける田村潔司は、その猪木イズムをどのように継承していくのか。UWF時代の経験と共に語ってもらった。

10月1日にアントニオ猪木さんが亡くなられた。

猪木さんといえば、前田日明さん、髙田延彦さん、佐山聡さん、藤原喜明さん、木戸修さん、山崎一夫さんらUWFスタイルを作り上げた“第一世代”の人たちの共通の師匠であり、第二次UWFから参加された船木誠勝さん、鈴木みのるさんの師匠でもある人。そして、そもそもUWF誕生にも猪木さんは深く関わっていて、猪木さんなくしておそらくUWFも格闘プロレスもなかった。

なので今回は、連載2回目にして「解析UWF」というテーマからは少しそれてしまうかもしれないけれど、猪木さんがUWFの選手たちやUWFスタイルに直接および間接的に与えた多大なる影響を語っていこうと思う。

ボク自身は猪木さんの直接の弟子ではないし、お話しさせていただいた機会も数えるほどしかないので、想像の話になってしまう部分もあるけど、UWFの諸先輩方は間違いなく猪木さんの影響を強く受けていたと思う。佐山さんや髙田さんは、もともと猪木さんに憧れてこの世界に入ってきているし、それ以外の人たちも猪木さんと身近に接することで、そのイズムに感化されていったんじゃないかと感じる。

だからUWFという格闘プロレスの源流を辿ると、猪木さんのプロレスに対する姿勢や、いわゆる「ストロングスタイル」と言われる闘い方、そして一連の異種格闘技戦に必ずぶつかる。

猪木さんがああいう闘いを始めたのは、おそらくジャイアント馬場さんよりも上に行くために、自分独自のスタイルを構築していったんだろうけど、プロレスにとって本当に画期的なことだったんだと今さらながらに思う。

当時の猪木さんの試合を今の総合格闘技を観ている眼で見ると、粗が目につくかもしれないけれど、それは仕方がないこと。総合の闘い方は、いろんな選手たちのトライ&エラーによって知識が蓄積されて今にいたっているわけだから。1970年代の猪木さんにまだその蓄積がないのは当たり前のことだ。

それより今から40年くらい前のプロレスのリングで、のちの総合格闘技を想定しているかのような闘いをしていることが驚きであり、当時の猪木さんは格闘技の最先端を行かれていた方だったんだろうなと思う。

猪木さんとモハメド・アリの試合に関しても今の総合格闘技の目で見れば、あのルールにおいても他にいくらでもやりようがあると思う人もいるだろうけど、それを言うのはナンセンス。レスラーとボクサーがあのルールで闘ったら実際どうなるか。誰もわからなかった時代に、世界最強のボクサーとフルラウンド闘った猪木さんは、やはり偉大だ。

ちょっと話は逸れるけど、同じように前田さんとアンドレ・ザ・ジャイアントの試合(86年4月29日、三重県津市体育館)も今の総合格闘技を知っている目で観れば、「距離を取ってヒット・アンド・アウェーでローキックでダメージを与えて、テイクダウンしてしまえば、いくらアンドレが大きくても倒すことは可能」と思うかもしれない。でも、それは初期UFCなどで大きな選手がやられている姿を知っているから言えるのであって、あの時代のアンドレがガチガチに攻めてきたのは、本当に恐怖だったと思うし、あれをしっかりと対処した前田さんは、やっぱりすごいと思う。

格闘プロレスや総合格闘技というのは、そういう先人たちの勇気ある闘いの積み重ねによって、少しずつ形成されていったものなのだ。

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