清原和博が野球人としてもっとも輝いていた時代を読む2~プロ野球死亡遊戯があえて“令和の夏”に書きたかった話(著/中溝康隆)

7月21日発売『キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー』(白夜書房)より

これだけ読むと、巨人ファンであるものの他球団もOKというスタンスだ。しかも、セ・リーグ某球団スカウトの「清原が巨人ファン? そういうことは全然気にしていない。高校生の90パーセント以上が巨人ファンですから(笑)」という呑気なコメントが続き、キヨマー特有の豪快さと大らかさもあり、まさかドラフトで涙を流すような雰囲気は微塵もない。行きたいのは巨人、それがダメなら巨人と対戦できる同じセ・リーグ球団。家族もいる地元・岸和田に近い阪神ならなおよし。はっきりと公言はしないものの人気のないパ・リーグはできれば避けたい……これは別に清原だけではなく、当時はアマチュア選手のほとんどが似たようなスタンスだった。

雑誌『セブンティーン』85年8月20日号には「桑田くんvs清原くん どっちもステキどっちもスゴイ」なんてこちらも緊張感皆無の特集記事が組まれている。チェッカーズ、吉川晃司、男闘呼組と並び、すてきボーイズとして取り上げられるキラキラのアイドル球児。「試験に出る桑田くん清原くん」アンケートコーナーで、清原くんは野球をはじめたキッカケを「小3のとき。なんとなくリトルのテスト受けたらパス。あれで人生きまった」と真面目に答える一方で、趣味は「音楽鑑賞。それも、明菜がいっちゃん好きやね。歌うまいもん」、好きなTV番組は「歌番組かな。ザ・ベストテンとかね。明菜の出てるんやったら、みんな見る」なんつってサービス精神満点でジャイアンツ愛より中森明菜愛をひたすら強調。その一方で、桑田くんが大切にしているものは「去年の夏、知り合いからもろた王さんのサイン色紙。毎日ながめてまぁ~す」とさりげなく数カ月後の喧噪を予感させる、衝撃のガチンコ発言をしているのも興味深い。

予兆は確かにあった。強行指名は「なんでや!」じゃなく「本当にやりやがった!」である。決して巨人が桑田を何の前触れもなく、想定外の1位指名をしたわけではないのだ。現に『PLの桑田、清原を狙う巨人スカウトのマル秘作戦』(『週刊サンケイ』85年8月8日号)というような記事はかなり早い段階で週刊誌上を賑わせていた。PL学園の野球部は厳しいセレクションを通過したものだけ入部が許される狭き門だが、この春は地元の少年野球チーム「ナニワ・ボーイズ」から3名もの選手が送り込まれている。立浪和義(87年中日ドラフト1位)、橋本清(87年巨人ドラフト1位)、そしてキャッチャーのI君だ。このI君は巨人現役スカウト部次長の息子だった。もちろんIスカウトは陰でコソコソしないと否定するが、実際にKKコンビの家族ともPL野球部の父兄として堂々と接触できるわけだ。

キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー
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