2024-09-06 12:00

鈴木みのるインタビュー、帝王・高山善廣のこれまでとこれから

『TAKAYAMANIA EMPIRE 3』開催記念インタビュー
『TAKAYAMANIA EMPIRE 3』開催記念インタビュー
写真提供=平工幸雄
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今年の9月3日に後楽園ホールで開催された『TAKAYAMANIA EMPIRE 3』。BUBKAでは、高山善廣の盟友・鈴木みのるにイベント前にインタビューを敢行。イベントへの思いを語った模様をお届けする。

「なんで受身取るの?」

――9月3日に後楽園ホールで、高山善廣選手を支援する大会『TAKAYAMANIA EMPIRE』が5年ぶりに開催されますが、この大会は鈴木さんが中心となって動いているんですよね?

鈴木みのる そうだよ。大会を運営しているのは、自分がやってるグループですから。高山(善廣)を支援する会があって俺がいるんじゃなくて、俺が高山を支援する会の代表だからね。

――そもそも鈴木さんが代表をやることになった経緯は?

鈴木みのる 高山からの指名です。高山と高山の奥さんからぜひと言われたんで、「やります」と。やっぱり、最初はいろんな人が「協力したい」と名乗りを上げてくれたからさ、本当ならもっと外面のいい人とか、もっと有名な人が旗振り役をやったほうがいいんじゃないかと思ったんだけど、本人がそう言ってくれてるんでね。じゃあ責任を持ってやらせてもらおうと。ただ、これは俺じゃなきゃできなかっただろうね。

――それぐらい大変なことがいろいろとある、と。

鈴木みのる これを始めてからいまに至るまで批判が多いんで。

――なんで批判が起こるんですか?

鈴木みのる 「高山を使って好感度を上げようとするな」とか「高山で商売するな」「高山で儲けようとするな」とか、そんなのがSNSとかで山ほど来るんだよ。あたりまえだけど、こっちは儲かったことなんか一度もないけどね。でも、何をやっても言うヤツはいっぱいいるんで。これを受け流せるのは、たぶん俺だけなんだろうなって思ったね。

――ひどい話ですね。SNSの誹謗中傷は今や社会問題になっていますけど。

鈴木みのる 俺なんか、小池百合子にチョップくらっても文句言われるんだから(笑)。

――それはまたちょっと違う気もしますが(笑)。

鈴木みのる まあ、『TAKAYAMANIA』に関しては、俺が何を言われようとどうでもいい。高山がリハビリを続けたり生活するためのお金が集まればそれでいいんだから。高山は友だちだからやってる、それだけだよ。

――鈴木さんと高山さんの親交が始まったのは、2003年に鈴木さんがパンクラスからプロレスに戻ってきてからですよね?

鈴木みのる そうだね。それまでも顔見知りではあったけれど、絡むことはなかった。俺がプロレスに戻ってきてから新日本に出た時、一緒になってね。そこからなんか意気投合するようになった。

――それはやはり同じUWF系出身だからですかね?

鈴木みのる それは関係ないでしょ。それまで絡みがないんだから。ただ、新日本のシリーズに参加するようになって、控室とか試合後に行く居酒屋であいつと人の悪口を毎日言ってるうちに盛り上がって意気投合したんじゃないの?「蝶野(正洋)ムカつくよな」とか「天山(広吉)、あいつなんなんだよ」とか言い合ってたのが最初だった。

――でも高山さんは、U系出身で当時すでに「プロレス界の帝王」と呼ばれていた人だから、鈴木さんにとってもある種の道標というか、参考になったんじゃないですか?

鈴木みのる べつに高山を参考にしようとも真似ようとも思ってなかったけど、自分がどうしていいかわからない時に相談できる相手ではあった。まだ、プロレスに戻ってきたばかりで、わからないことがたくさんあった時にね。

――それは今日のプロレスラー鈴木みのるを作る上で大きかったんじゃないですか?

鈴木みのる それはもちろんそうだよ。高山が言ってくれた言葉でいちばん印象的だったのは、「なんで受身取るの?」っていうこと。俺は練習生から新人時代の2年間は新日本の道場にいたので、その頃やったことを思い出しながら早くプロレスに馴染むために受身を取ってたんだよ。そしたらあいつが、「それじゃおもしろくないよ」と言ってくれたの。俺は早く馴染みたかったんだけど、「馴染んじゃダメだ」ってことを教えてくれたんだ。

――プロレスの世界において異物感のある外敵だからこそ意味がある、と。

鈴木みのる 俺は最初意味がわからなかったんだけど、「受身なんか取らなくたって試合は成立するよ」って。「だってブルーザー・ブロディもタイガー・ジェット・シンもめったに受身取らねえじゃん」って言われたんだよ。たしかにそうだなって。

――“強いヒール”は簡単には倒れないから成り立つわけですもんね。

鈴木みのる だから「満遍なくうまくなくていいんだ」って。「できないことも含めてそれが個性になる」ってことを言われてさ。そうやって個性の作り方も教えてくれたの。

――プロレスラーとして大事なことを教えてくれたわけですね。

鈴木みのる 高山の助言がなかったら、俺ぐらいの身長で普通に受け身をとって、スープレックスとか空中殺法なんかもやってたら、どこにでもいるジュニアヘビー級枠のレスラーのひとりだったかもしれない。

7年の寝たきり生活を思う

――その「異物感が大事」というのは、三沢光晴さん存命時代のプロレスリング・ノアへの参戦もそうですよね。

鈴木みのる あれも高山が誘ってくれたんだよ。「鈴木さん、ノアに行こうよ。鈴木みのるvs三沢光晴とか、鈴木みのるvs田上明とか見てぇ」とか言うんだけど、俺は最初ピンと来なかったんだよ。新日本のプロレスは若手の頃にやってたからともかく、全日本系、ジャイアント馬場さんの流れを汲むプロレスなんて俺にできんのかよ? ってね。そしたら高山が話を進めてくれて、オッケーが出たってことで、ノアの東京ドーム大会(04年7月10日)にIWGPタッグ選手権を一回やりに行って。

――高山さんと持っていたIWGPタッグの防衛戦をノアでやったやつですね(vs森嶋猛&力王猛)。

鈴木みのる ところがその後、高山が脳梗塞で長期欠場になって、どうしようかと思っている時に小橋(建太)からの発案で、「鈴木と試合がやりたい」っていう連絡をノアからもらって。で、小橋とGHCヘビー級タイトルマッチをやって(05年1月8日、日本武道館)。そうこうしているうちに丸藤(正道)が話しかけてきて、あいつと話しているうちに意気投合しちゃって。で、どっぷりノアに居座ってね。

――鈴木さんが参戦することで、ノアに新しい景色が生まれましたしね。

鈴木みのる それで今度は、ノアでの俺を見た全日本の関係者が声をかけてきて。“武藤全日本”に上がるようになって。しばらくしたら高山が復帰して、俺がNOSAWA論外たちと組んだGURENTAIというチームに高山を引っ張って、それが一大勢力になってね。

――武藤全日本の最盛期を生み出しましたよね。

鈴木みのる あの時、日本のプロレス界のトップは全日本だったと思うからね。

――そして鈴木さん自身、三冠ヘビー級王者になり、「プロレス大賞」でMVPになって。高山さんに「ノアに行こうよ」と言われてから、プロレスの道が開けていったという。

鈴木みのる それまでパンクラスという世界から新日本プロレスという世界という、「リング」という同じ場所でやるのに全く違うことをやることに一大決心が必要で、その先のことはまったく考えることができなかったんだけど。そこを導いてくれたのが高山だったね。

――ある意味で、プロレス界の恩人というか。

鈴木みのる そうなのかな。俺のプロレスラーとしての基礎を作ってくれたのは藤原(喜明)さんであり、(カール・)ゴッチさんなんだけど。パンクラスを経たあとのプロレス人生で、いちばん大きな影響を最初に与えてくれたのは、やっぱり高山なんだろうね。

――その高山さんが、2017年に試合中の事故で頸髄完全断裂の重傷を負って首から下が動かなくなって、もう7年になるんですよね。7年間ほぼ寝たきり生活というのは大変なことですよね。

鈴木みのる それは俺たちが普通の生活を送れているから7年という時間を測ることができるんじゃないかな。高山本人に聞いたことがあるんだけど、時間の経過がわからないっていうんだよ。

――時の流れという感覚すら麻痺してしまうというか。

鈴木みのる 明るくなったら目が覚めて、起きている時に見る景色はずっと一緒で、暗くなったら寝て。それを何百回、何千回と繰り返しているからわからないって言ってたよ。だから「7年は長いな」っていうのは、それは俺たちが元気に生きているからこそ数えることができて、高山は時間や空間が止まったままなんじゃないかな。

――想像することしかできませんけど、『ドラゴンボール』の「精神と時の部屋」の中にずっといる感覚に近いのかもしれないですね。

鈴木みのる そうかもね。あいつにしてみたら昨日もおとといも一緒なんで。その辺の感覚は、たぶん誰にもわからないよ。そういう状況で生き続けている高山っていうのは「強いな」って思うんだよね。

――すごく強いですよね。

鈴木みのる 高山に会いに行って話をすると、身体は動かないけど口は悪いからね~。毒舌が止まらないから(笑)。

――“帝王節”は健在なんですね(笑)。首から下はまだ麻痺状態ですけど、頭はすごくクリアなわけですもんね。

鈴木みのる そうだね。プロレス(の映像)も最近やっと見られるようになったって。それまではやっぱり見たくない気持ちが強かったらしいんだよ、自分ができないから。

――そりゃそうですよね。

鈴木みのる いま俺はしょっちゅうアメリカで試合しているけど、高山のところに行ってその話をしたり写真を見せたりすると、いつも「いいな~」って言ってるよ。

――高山さんも頸髄をケガしなかったら、本当は現役生活の総決算としてアメリカに行きたかったわけですもんね。

鈴木みのる だから俺はあいつに「羨ましいな」って思わせるために、毎回自慢しに行ってる。そうやってあいつに刺激を与えてるよ。そうしたら高山が、「今度、(アメリカの)AEWに行ったらクリス・ジェリコのフィギュアにサインもらってきて」とか言うんだよ。俺はジェリコの敵なのにさ(笑)。しょうがないから関係者に頼んでサインもらって、あいつにお土産として持っていってね。俺をパシリに使えるのは高山ぐらいだよ(笑)。

文・構成=堀江ガンツ

鈴木みのるすずき・みのる
1968年6月17日生まれ、神奈川県出身。1987年に新日本プロレスに入門、飯塚孝之戦でデビュー。新生UWF、プロフェッショナルレスリング藤原組を経て、93年9月に船木誠勝らとパンクラスを旗揚げ。2003年からは新日本のリングに参戦、その後も様々な団体の試合に参加し、現在に至るまでプロレスラーとして奮闘し続けている。

2003年9月21日、NWFヘビー級選手権での高山善廣vs鈴木みのる
2003年9月21日、NWFヘビー級選手権での高山善廣vs鈴木みのる
写真提供=平工幸雄

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