吉田豪による「鈴木エイト×ロマン優光」スペシャルインタビュー

吉田豪による「鈴木エイト×ロマン優光」のスペシャルインタビュー

コラムで真っ当な正論を述べることに定評があり、様々な陰謀論を取り上げる著作『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』を発表したロマン優光氏。統一教会などのカルト問題を長らく追い続け、著作『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』を発表した、気鋭のジャーナリスト鈴木エイト氏。プロインタビュアー吉田豪が、二人に「陰謀論の今」を聞く。鈴木エイト氏が初めてロマン優光&吉田豪と語り合う、フレッシュな顔合わせが実現した濃厚インタビューです!

「鈴木某は許さない」

――鈴木エイトさんが、こういう形でメディアでブレイクするとは思ってなかったです。

鈴木エイト そうですよね。やってることは変わってないんですけど、いつの間にか……。

ロマン優光 毎日テレビで観てる気がしますよ。

――和田アキ子さんが「あのキュウっていうのおもろいなあ」って言ってたりで(笑)。

鈴木エイト そうそう、キュウって何? みたいな(笑)。そうやって認識してもらっただけでありがたいですけどね。いまだに慣れないですよ。ふつうに街歩いててもそんなに声掛けられたりしないし。こないだ電車に乗ってたら前に座ってた人がスマホと僕を見比べてたんで、バレたなと思いましたけど。一昨年ぐらいに摂理っていうカルト団体の夏祭りに家族連れで潜入したことがあるんですけど、いろいろ探ってたらそこに座ってた幹部がやっぱりそうやって見比べてたのと同じだって。

――もう潜入はできなくなりましたね。

ロマン優光 さすがに顔が割れましたよね。

鈴木エイト 政治家の直撃って選挙のときしかできないんで、衆院選とか参院選のとき駅頭(駅の出入り口で演説やあいさつなどをすること)を狙って行ってたんですけど、山上徹也が「選挙のときが政治家を銃撃できる唯一のチャンス」って書いてて、あの「銃撃」を「取材」と置き換えたらまったく同じこと思ってたから、これから警備がかなり厳しくなるかなって。逆にいままで無視してきた政治家が、ある程度こっちの名が売れてきたら無視できなくなると思うから。萩生田(光一)から「鈴木某は許さない」って言われましたしね。

――7月11日に行われた統一教会の記者会見の直後、同じ会場でエイトさんが統一教会側の発言を否定する会見を勝手に始めたのが大きかったと思うんですよ。あれでメディアの人が、この人は統一教会に詳しいし、しゃべれるぞって認識したんだろうなって。

鈴木エイト あれは藤倉(善郎、やや日刊カルト新聞創始者)さんの入れ知恵なんですけど、ああいうのはメディアの人にウケますね。統一教会がメディアを排除して会見したなかでああいうことをやれたのは痛快な感じでした。

ロマン優光 あの会見って、ほとんどのメディアが会場に入れてもらえなかったんですよね。

鈴木エイト そうですね、教団側と普段つき合いのある人しか。「信頼のあるメディア」って。

――つまり余計なこと書かないメディア。

鈴木エイト それで余計に炎上っていう(笑)。

ロマン優光 そして信用がすごくなくなって。

鈴木エイト しかも1社3人までとか言ってるわりに世界日報とかバンバン入ってましたから。

ロマン優光 あれは天然でやってるんですよね? たとえば日本テレビの番組が統一教会批判をしていることに対抗して、「統一教会の信者が『24時間テレビ』に入り込んでる」って言ったら日テレの信用が落ちると思ったのかもしれないけど、ふつうは統一教会は恐ろしいなって思うほうが多いはずなんですよ。

鈴木エイト そうですよね、そんなに巧妙に入り込んでるのかって。あれでかえって日テレ側がやる気を出したわけでしょ。逆に正当なジャーナリズムを喚起させるようなやり方をしてるなと思って。一方では巧妙にメディアコントロールとか政治家コントロールしてる節もあるんですけど、その一方ではああいう稚拙な感じの、なんでこんなやり方するんだろう、みたいなのがボロボロ出てきちゃうわけですよ。だから素材としてはおもしろいですよね。どんどん向こうからネタ出しをしてくれて事態がぜんぜん沈静化しないという。

ミュージシャン時代

――しかしエイトさんにしろロマン優光にしろ、反社会的な音楽活動をやってたような人たちが、こうやって真面目に社会問題を語る本を出す時代になったのは興味深いですよ。

鈴木エイト いや僕はべつに反社会的な音楽活動はしてないし、もちろんロマンポルシェ。もそんなんじゃないと思いますけど(笑)。

ロマン優光 どんなバンドをやってたんですか?

――『週刊文春』に「25歳頃まではパンクバンドのボーカルとして活動していた」「バンド時代のステージネームが数字の七にちなんだものだった」と書かれてましたけど。

鈴木エイト 僕はゴシックパンクとかニューウェイヴとかだったんですよ。でも、ぜんぜん一般ウケしなくて。ちょっとお化粧とかしてた時期があるんで、それでビジュアル系のバンドとばっかり対バンさせられてたんですよ、SHAZNAとかそういうのと。もっと激しい音楽をガチガチやってたつもりなんですけど、結局そっちは芽が出なくてやめちゃいましたね。道半ばというか挫折して細々とこんな活動をやってたらいつの間にか……。

――いま、具体的にバンド名とか当時の写真とかは出さないようにしてるんですか?

鈴木エイト そうですね、一応。

――統一教会がエイトさんのスキャンダルを探し始めたらしくて、「ジャーナリスト活動を始めてからは問題はないはずです」って今日も『サンデー・ジャポン』で言ってましたけど、バンド時代は何かあるかもしれない?

鈴木エイト クスリとかは一切やってなかったですけど、女性関係はちょっと……。ハメを外してた時期もあったんで、そこまで発掘されるとちょっとまずいかなとは思います。でも、独身時代だし30年ぐらい前だしいいかな。

ロマン優光 相手の女の人も30年経ってたら。

鈴木エイト たぶんわかんないと思うんですよね。そのときも騙してたわけでもなくて、ちょっとだけ人気が出たバンドマンの驕り的な。

ロマン優光 まあ、活動がビジュアル寄りだったら、あのころはよくある話かと。

鈴木エイト そうですよね。こういう活動を始めてからは相談者に手を出したりそういうことは一切してないので。美人局的な胡散くさいアプローチはけっこうあったんですけど、そういうのは逆にその裏を取ろうとして、相談に乗るフリして藤倉さんとかに裏から探ってもらうみたいなことをやってたんですけど。とりあえずスキャンダル的なものは大丈夫かなと思います。あとは本がある程度売れて印税も入ってくるはずなので、脱税とかでやられる可能性があるかもしれないし、税理士も入れてちゃんとやろうって。

――突然こういう形で仕事が増えることをまったく想定してなかったはずですからね。

鈴木エイト そうなんですよね。ふつうにビル管理の仕事なんかもやってて、そっちがなかなか手がつけられなくて。ホント忙しくなりすぎちゃってどうしようかなと思ってます。

――ちょっとおもしろかったのが、エイトさんが統一教会と安倍晋三元首相の関係を掘り下げた記事をちゃんと載せてくれた媒体のひとつとして『実話BUNKA超タブー』の名前を堂々と出していたことなんですよ(笑)。

鈴木エイト そうなんですよ、超一流月刊誌の『実話BUNKA超タブー』(笑)。実際あのとき取り上げたのは赤旗がガッチリやったのと、『ポスト』と『FRIDAY』と、月刊誌では『実話BUNKA超タブー』だけでしたね。そのうちふたつに僕は関わってるんですけど。

――『実話BUNKA超タブー』は右も左もとりあえず悪口を言えればいい雑誌ですから。

鈴木エイト あのとき「次期衆院選は共産党一択」みたいなのが表紙に載ってたんで、それがあって統一教会側がこれはそういう雑誌なんだってことでやたら攻撃してたんですよね。

――ただの逆張りなのに(笑)。

ロマン優光 そういうのも統一教会側の意図的な情報操査なのか本気なのかすごい不思議なんですよ。

――しかも、ロマン優光が陰謀論を批判する本を出したタイミングで『実話BUNKA超タブー』が陰謀論の特集号を出すっていう。

鈴木エイト なんでもありですね。でも、ロマンさんの『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』はめっちゃまとまってておもしろかったです。

ロマン優光 ありがとうございます。ただ結局、俺は実地に取材とか行ってるわけじゃなくて、悪い言い方したら人の上前をはねてるわけじゃないですか。いろんな人が調べたものをまとめて感想を書いてるだけというか。

鈴木エイト でも、こうやってまとめてもらうと、逆に自分の考えもまとまるし新発見もあるし、僕も全部を現地で取材してるわけじゃなくてネットの情報から取り上げることもあるんで、この本はわかりやすいしうまいなと思いますね。対談のお話をいただいてすぐ注文したんですけど、あとがきに僕の名前も出していただいてるし、ホントありがたいです。

ロマン優光 企画の段階ではおもしろ陰謀論だけでまとめようとしてたのに、世の中がバーッと動いちゃったんで。本来なら重くて神真都Qぐらいで終わってたと思うんですよね。

――そしたら安倍元総理の事件が起きて。

ロマン優光 それでシャレにならないぐらいになっちゃったんで。さすがに人が死ぬと。

鈴木エイト 安倍さんと統一教会の関係自体も陰謀論だって話も初期は出てましたけどね。

――「むしろ安倍さんは統一教会と戦っていたんだ!」みたいなことを言う人もいて。

鈴木エイト そうですそうです(笑)。

ロマン優光 あの人(門田隆将/門脇護)って捏造記事だして名前を替えざるを得なかった人じゃないですか、あんな人のこと信用しないでしょ?

――よくその牌が通ると思ったなっていう。

ロマン優光 牌を通そうともしてないでしょ、あの人たちは。自分を見てる人に向けてのアピールをしてて、そういう自分を信じてる人からお金をもらうことしか考えてないから。

鈴木エイト 『月刊Hanada』とか『WiLL』とかもずっとそんな感じですよね。

ロマン優光 花田(紀凱)さんも「アウシュヴィッツのガス室はなかった」(花田氏が編集長を務めた月刊誌『マルコポーロ』にホロコーストを否定する記事を掲載。同誌は廃刊となった)からあそこまで行かざるを得なくなっちゃったんですよね。

――柳澤健さんの『2016年の週刊文春』で、花田編集長について「本人はこういう思想を信じてるわけじゃなく、ビジネスとしてこれをやってるんだ」みたいなことが書いてあって、なんのフォローにもなってない、むしろ悪質だよそれって思ったんですよね。

ロマン優光 ホントそういう人たちが一番悪いから。陰謀論を言ってくる人って、ホントに信じてる人と陰謀論を信じさせてお金を巻き上げようとする人とふた通りいるので。

鈴木エイト JOSTAR(有名ユーチューバー)とかそうですもんね。

ロマン優光 JOSTARとかホント逮捕したほうがいいと思いますよ。

鈴木エイト こないだ現物見せてもらいました、テスラ缶(「様々な病気に効果がある」と一部で言われている缶)。こんなので70万円か、みたいな。

ロマン優光 とにかく、そういう問題をリアルタイムで追っかけていく先に、エイトさんとかウォッチャーの人たちがいたんですよ。

鈴木エイト それをロマン優光さんがちゃんと分析してこういう本を出してくれて。もともとサブカル系も好きだし、プロインタビュアーの取材もいつか受けたいなと思ってたので、今日はお会いできて光栄で。じつは今日けっこう緊張してるんですよ。テレビは緊張しないですけど、このふたりに会うのは(笑)。

――緊張する必要ゼロです! 

鈴木エイト 本のタイトルは誰がつけたんですか?

ロマン優光 担当編集です。

鈴木エイト 絶妙なタイトルですよね。そして「誰よりも正しいミュージシャン」(帯に「“誰よりも正しいミュージシャン”ロマン優光、日本の未来を心配する」と書かれている)っていう。

ロマン優光 そんなこと誰も思ってないのに! なんなら俺を貶めるために書いてるんですよ!

――基本、正しくない人間が正しいことを言ってるのをおもしろがってたのが発端で。

ロマン優光 だから、あれはどっちかというと小バカにした言葉なんですよ。論理的には正しいことを言ってるんだけど……。

――基本的に知性はある人なんで。ただ本人の行動が正しくないところがあったから。

ロマン優光 自分が正しいなんて主張してないし……。

鈴木エイト 僕は昔からこの人すごい頭いいなと思ってたんですよ、まじめなんだろうなって。

ロマン優光 いやいや!

――まだまだ続く濃厚インタビューの続きは発売中の「BUBKA11月号」で!

取材・文=吉田豪

鈴木エイト=すずき えいと|ジャーナリスト・作家。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。『週刊朝日』『AERA』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』などに寄稿。単著に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)、共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩書房)など。

ロマン優光=ろまん ゆうこう|ソロパンクユニット「プンクボイ」で音楽デビューしたのち、掟ポルシェとともに、ニューウェイヴバンド「ロマンポルシェ(のちにロマンポルシェ。)」を結成。ディレイ担当。著書に『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』『90年代サブカルの呪い』(ともにコアマガジン刊)など。

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