R-指定(Creepy Nuts)が語るスチャダラパーの時代

R-指定(Creepy Nuts)
写真/河西遼

――あのドラマを見ると、ウータンのメンバーの出身地、NYのスタテンアイランドにある構造的な貧困や暴力を、まざまざと見せつけられるよね。

R-指定 だから、そういった状況に自分たちを押し込める「システム」や「社会構造」に対してキレるとか、怒りを表すことが多いと思うんですね。でもスチャはその意味では環境のちゃんとしたところから出てきた人ですよね。

――ANIさんとSHINCOさんの松本兄弟は川崎出身だけど、BAD HOP的な川崎の港湾方面じゃなくて、田園都市線沿いのいわゆるアップタウンの方で。

R-指定 RHYMESTERもその意味ではちゃんと教育を受けてきた人だけど、そこで自意識だったり「心のゲットー」を反骨の種にしてますよね。一方でSDPは、日本人がいかに「空気」を読んだり、空気に飲まれて流される民族なのかってことに気づいて、そこと戦ってると思うんですよ。

――山本七平が「『空気』の研究」で書いたようなことだよね。RHYMESTERも同じように「空気」を問題にすることが多いけど、それと自意識をぶつけることが多いとしたら、SDPはもっと「空気自体」に対して怒ってる。

R-指定 しかも、それがいまに至るまでずっと変わらないスタンスなんですよね。

――『シン・スチャダラ大作戦』の“スチャダラパー・シン・グス”でもそういう部分が垣間見れる。

R-指定 各アルバムで、その当時の空気、その当時の世の中の「読まなあかん/飲み込まなあかん空気」に関してこの人らはキレてるわっていう。

――でも「空気にキレる」って難しいよね。「その空気が気持ちいい」って思ってる人が多いから、そういう空気が醸成されるわけだし、そういう意味では世のメインストリームに文句を言うことになるというか。

R-指定 システムにキレるとなると、一致団結しやすいと思うんですよ。でも空気にキレるって、世の中に水を差すっていうことですもんね。あんなに親しみやすいキャラクターの人たちが、いろんなことに水を差してくるっていう(笑)。

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