【BUBKA9月号】なんてったってキヨハラ第12回「ホームランと欲望の日々」

文/中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)

80万円の宮廷料理、500万円のコート、3000万円の毛布は座蒲団がわり、公募1億円のゴルフ場、走る億円カーズラリ

これは『週刊現代』89年新年号の巻頭カラー特集「金持ちニッポン究極の衣食住遊」で紹介された「世界に冠たるニッポンの金余り現象」である。

本橋信宏氏が書いた村西とおる伝『全裸監督』でも「ダイヤモンド映像グループの頂点は、一九八九年暮れ、日本列島がバブル熱で浮かされていたそのときであろう。日経平均株価は近い将来、十万円まで跳ね上がるだろうと、経済評論家たちはしたり顔で言い切っていた」という記述がある。

ヤングジャイアンツのオフは結婚ラッシュで、槙原寛己が全日空ホテルで開いた豪華披露宴では200万円のウエディングドレスや2000万円の打掛が話題に。皆、とんでもなく浮かれていたのだ。

あの桑田真澄でさえ、元号が「昭和」から「平成」へと変わった直後に発売された『週刊明星』89年1月26日号で、ハワイ出身の美人セクシータレントに会うため、彼女の実家があるオアフ島をたずねた“熱愛ストレート”を報じられている。平成元年、バブルのうだるような狂熱はまさにピークを迎えつつあった。

『週刊宝石』でAV女優の沙也加と対談して、「しかし、見れば見るほど大きいですねェ。いったいどんなオチンチンしてるんでしょうね」「ハッハハハハ、困ったもんだ」なんつってハシャぐ能天気な元横綱・双羽黒こと北尾光司を誰も責めることなどできやしないだろう。

そんな浮ついたニッポンの空気にスポイルされない男として、『週刊ベースボール』は「アイドル化とサラリーマン化に引き裂かれたプロ野球 だからこそ“たった一人の怪物”清原和博にラブコールを!!」と背番号3に新時代を託す。

西武の坂井保之球団代表は、「キヨはビーストですよ、ビースト。つまり、野獣。単なる野球選手を超えちゃってるんです。ボクは、彼を見ていると怖くなるよ」なんてその底知れぬ潜在能力を恐れた。

令和の時代に大リーグでホームランキング争いを独走する、エンゼルスの大谷翔平が放った特大アーチを見た現地の実況アナが、「彼はビーストだ!」と絶叫したのは記憶に新しい。

世界に誇る二刀流より30年以上前の平成元年にも、日本球界にリアルビーストはいたのだ。今の野球少年がオオタニに憧れるように、あの頃のガキたちはキヨハラの背中に21世紀の光を見た。

――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA9月号にて!

なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』『現役引退―プロ野球名選手「最後の1年」』(新潮新書)などがある。

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