NMB48塩月希依音の『10クローネとパン』を全人類に見てほしい理由

「僕のアオハル」公演で『10クローネとパン』をパフォーマンスする塩月希依音(しおつき けいと)
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6月11日、NMB48のチームBⅡによる「僕のアオハル」公演を観覧した。感想を簡潔に言うと、「とにかく最高」。この一言に尽きる。この思いを誰かに共有したい、この興奮をどこかに残しておきたい……そう思い、この記事を執筆している。

実を言うと、これまでAKB48劇場とSKE48劇場で公演を観たことはあるのだが、一番地元に近いはずのNMB48劇場はまだ足を踏み入れたことがなかった。根っからの48グループファンだった学生のころから十年来、「ここでNMBの公演がやってるんかあ。いつか観たいなあ……」とぼんやり眺めては、なんとなく勇気が出ずに周辺をうろちょろとするだけで終わっていたのだ。

そんなNMB48劇場で、機会があり公演を観覧することが叶った。前述したように、演目は「僕のアオハル」公演。48グループのシングルのカップリング曲やアルバム収録曲、劇場公演曲などで編成されており、公演名の通り、青春感・疾走感が溢れる爽やかな楽曲が中心になっている。

大音量のovertureが鳴り響き、熱気あふれるファンのコールが怒号のようにそれに呼応する。一曲目の『清純フィロソフィー』のイントロとともに登場するメンバー。
眩しい。ステージの後ろのLED電飾と同じくらい、いやその何十倍もメンバーの笑顔が眩しい……。

魅力的なメンバーが多い中、公演を通して私が一番目を奪われたのは塩月希依音だった。5月に発売された29枚目シングル『これが愛なのか?』で坂田心咲とWセンターを張る、言わずと知れたグループのエースである。「僕のアオハル」公演でも中心で踊ることが多いのだが、なるほどなぜ彼女がその場所にいるのか、すぐに腑に落ちた。

誰より楽しそうに踊っているかと思えばアンニュイな表情になったりとコロコロ変わる表情、ファン一人一人に送る丁寧なレス、緩急を自在に操るダイナミックなダンス(体幹が安定しているのか、特にターンが芸術のような美しさだった)、MCでも周囲を見てその場にあった切り返しで盛り上げる頭の回転の速さ。非の打ちどころがないどころか、どこをとっても120点なのだ。

特筆すべきは、彼女のユニット曲『10クローネとパン』。曲名にもある”クローネ”とは、北欧・中央の通貨の単位。パンすら十分に買えない貧しい主人公が見世物小屋のテントに潜り込んでその輝かしい光景に心酔し、正式にショーを観たから10クローネを貸してほしい、という歌詞になっている。「パンを買うためにお金を使うのではなく、大切な自分の夢を叶えたい」――西洋の寓話を思わせるような世界観で曲自体も素晴らしいが、彼女の表現力が傑出しているのだ。

後を向いて立ち両腕を時計の針のように回すところから始まるのだが、この単純な振りだけでももう既に“違う”。曲が始まると、無機質な人形っぽさと憂いが混ざった頽廃的な表情で、難易度の高いダンスをしなやかに、時に力強く踊る。

“憑依型”なんて言葉で片付けるのはあまりにも勿体ない。多分、何度も何度も世界観を自分なりに咀嚼して、これでもかというほど見せ方を研究してきたのだろう。陳腐な表現を承知で言うと、一つの物語が確かにそこに存在していた。圧倒的な表現力に、彼女が生み出す世界をもっと見ていたいと強く願うほどだった。

この日、観客には不定期で発行される『出口学級新聞』6月号が配られた

他の曲やメンバーに関しても、まだまだ言い足りないことは山のようにある。学校生活が懐かしくなる暇すらもったいなくなるほど輝かしく瑞々しい曲の数々、可愛らしさも妖艶さも詰め込んだユニットパート、先輩・後輩の分け隔てなくボケとツッコミが入り乱れるMC……。しかし、その全てを伝えるには私の文章力も時間も到底足りそうにない。

なぜ私はもっと早くからNMB48劇場に通っていなかったのか……後悔先に立たず、ひとまずはこの余韻にもう少し浸るために、この日の公演と新公演「天使のユートピア」の配信を購入して楽しみつつ、劇場公演のスケジュールとにらめっこをする毎日である。

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